こちらのページに興味を持って頂き誠にありがとうございます。
普段、不動産関係(賃貸)の仕事をしており、私の経験や調べたことが皆様にお役に立てればという想いで書かせて頂きました。
この記事では大手不動産会社Xとの敷金返金に関する内容を公開しています。
主な内容としては
●敷金に関してのルール
●最高裁判所の敷金に関しての判決
●敷金返金を行うための書類確認
●弁護士に教えてもらった最悪のケース
このようになっています。
また、内容について注意点もお伝えしておきます。
①この内容を真似して頂くことは結構ですが、結果を保証するものではありません。
②一部分ですが法律の内容が書かれていますが、ご自身でもお調べください。
③ご相談者Sさんにアドバイスは行っておりますが、報酬などは一切抱いておりません。
(今回、Sさんという方から相談を頂きXと交渉を行ってきました。)
それと、不動産会社XとSさんと私の関係についてもお伝えしておきます。
これらを頭に入れて読み進めていただければと思います。
敷金返金までの経緯
今年の6月頃に退去した物件の敷金返金に関して情報をインスタで発信していました。
実際のインスタがこちら。
インスタを見たSさんから相談にのって欲しいと連絡を頂きこの物語がスタートしました。
(Sさんとは知り合いですが連絡をいただいたのは3年ぶりでした)
相談者Sさんの情報
大手不動産会社Xが所有(賃借人)している物件に居住されてました。
期間:2017年5月~2021年7月(51カ月)
家賃:147,000円
敷金:294,000円
原状回復費用:294,000円(税込み)
敷金返金:0円
敷金とは家賃の数カ月分を賃借人(貸してる人)に預けることです。
原状回復費用とは、入居中に壊したり汚したりした部分のお金になり、敷金から差し引かれることが一般的です。
相談内容
犬猫と一緒に暮らしていたので部屋の一部を傷つけたり汚したり認識はあるけど、原状回復費用と敷金の金額が全く一緒っておかしくないですか?
という内容でした。
場合によっては同じ金額になることはあるかも知れませんが、この時点で私も違和感を感じました。
いきなり相手と交渉する前にルールを知っておいた方がいいです。
敷金返金を行う前提として
①法律の理解
昔から原状回復に関してはトラブルがよくありました。
なので国の方で「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」という基準を設けています。
こちらの内容を超ざっくり説明すると!
●部屋の一部を壊したり、傷つけたり、通常の使用以上に汚した部分は入居者さんが払ってくださいね。
●次の入居者を見つけるための費用(ハウスクリーニング、クロス貼替)費用は大家さんが払ってくださいね。
また、昨年法律も改正されて民法621条「賃借人の原状回復義務」が追加されました。
こちらの内容を超ざっくり説明すると!
賃借人(借りた人)は通常損耗・経年変化については原状回復しなくていいですよ。
※2020年4月から新しく部屋を借りた人が民法621条の適用になります。
・家具の設置による床、カーペットのへこみ、設置跡
・テレビ、冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ(いわゆる電気ヤケ)
・地震で破損したガラス
・鍵の取替え(破損、鍵紛失のない場合)
・引っ越し作業で生じたひっかきキズ
・タバコのヤニ・臭い
・飼育ペットによる柱等のキズ・臭い
・日常の不適切な手入れもしくは用法違反による設備等の毀損
ただ、家を「借りる時」や「退去する時」にこんなお金払っていませんか?
- カギ代
- ハウスクリーニング費用
- 畳の表替え
- クロスの貼替費用 などなど
多くの人が払っていると思います。
日本には「契約の自由」の原則があり、賃貸人(貸した人)と賃借人(借りる人)で契約がある場合はそちらが優先になります。
ただし、契約書に書いてある内容がすべて適用されるわけではありません。
原状回復費用を請求されても払わなくてよい場合があります!
賃貸契約書の特約の欄に下記内容が書いてあった場合、あなたなら払いますか?
解約時の畳・襖・クロス・クッションフロア等の張り替え及び壁の塗り替え等その他補修費用は折半とする。
但し、室内クリーニング・エアコンクリーニング・破損箇所は全額借主(大家)負担とする。
これは平成17年の最高裁判所の判決の一部内容になるんですが、契約書に上記のように書いてあったとしても賃借人(入居者)はこれらの費用を払わなくてよいという判決がでました。
裁判所の判決としては。
①契約前に原状回復に関する内容の説明受け納得していること。
②原状回復費用(ハウスクリーニング)の項目を具体的(金額など)に明記していること。
上記2つが判決内容に書かれていました。
もし、原状回復費用の請求をされても契約書等に原状回復に関わる「費用」などが書いていない場合は、払わないと相手に言えることが出来ることになります。
↓こんな感じで金額の記載がない契約書は無効主張できるということです。↓(違い物件の契約書の一部です)
だだし
賃借人(借りた人)が壊した部分や通常使用以上に汚した場合は契約書に費用等が書いてなくても払わないといけません。
例)窓ガラス割った・ペットが壁を傷つけた・壁に穴開けた。
契約書に費用などが書いていないからと言って無効主張は出来ない。
過去の裁判事例でも賃借人(借りた人)が払う判決はたくさんあります。
この知識が知っているだけで賃貸人(大家)に対して交渉出来ますし、原状回復費用の明細をもらった時におかしな部分に気づくと思います。
今回の不動産会社XとSさんの契約書は!?
不動産会社XとのSさんとの間で賃貸契約書とは別に原状回復工事に関する確認書(以下:確認書と記載)がしっかり交わされていました。
賃貸契約書
原状回復費用に関する確認書
※ぼかし部分は不動産会社Xの社名、、物件名、日付、Sさんのお名前、捺印部分です。
さすが不動産会社Xは大手ということもありキッチリしていますね。
ここまで細かく金額が書いてある場合は請求に対してすべて払わないといけません。
だけど、原状回復費用に関する確認書の内容と請求には大きな違いがありました。
相手からの書類のおさえるポイントと確認方法
基本的に敷金の返金請求は難しくありません。
退去明細と確認書の内容を照らし合わせていくだけです。
ただ、前提条件として請求が届いたときに最初に確認することが2つあります。
写真の確認
退去明細を見てすぐに理解出来ればいいですが、「このクロスの張替えはどこの部分?」と疑問に思う場合は写真の請求をしてください。
写真がない場合は払えないと言っても問題はありません。
裁判になれば請求する側(賃貸人)が証拠(請求部分)を証明する必要があります。
一式の確認
このような明細が届いたら一式の確認してください。
●一式って何?
何㎡張り替えたの?
㎡単価はいくら?
もし、書いていない場合は詳細を教えてもらってください。
最低でもクロスやクッションフロアーの張替えがある場合は、「単価」「面積」が書いていないとおかしいです。
不動産会社Xが送ってきた書類
この書類の作り方はパーフェクトです。
一部「一式」という単位はありますが、問題ない範囲だと思います。
こちらの退去明細を見てるポイントとしては各項目に別けた方が解りやすです。
①清掃費用(ハウスクリーニング・エアコン清掃など)
②修繕費用(クロス貼替・補修、クッションフロア張替えなど)
③破損・欠損費用(破損や欠損(物をなくした))
この項目別に不動産会社Xから届いた明細を確認していきます。
①清掃費用
確認書にはご丁寧にハウスクリーニングの項目まで書いてありました。
※クリックしたら拡大できます。
確認書に記載している清掃費用がコレです。
確認書記載の金額 | |
ハウスクリーニング費用 | 89,000円(税別) |
エアコン清掃費用 | 8,500円(税別) |
合計 | 97,500円(税別) |
97,500円が清掃費として払うお金になります。
しかし、不動産会社Xの退去明細は
不動産会社Xの明細 | |
ハウスクリーニング(100㎡まで) | 82,000円(税別) |
ハウスクリーニング(割り増し) | 10,000円(税別) |
エアコンクリーニング | 9,800円(税別) |
室内・ペット飼育蓄積汚れ | 10,000円(税別) |
浴室・鏡鱗除去 | 10,000円(税別) |
窓枠粘着シール剥し | 2,060円(税別) |
合計 | 123,860円(税別) |
この時点で26,360円の差があります。
ツッコミどころ満載です。
●確認書と補修明細の単価が違う所(エアコン)
●ハウスクリーニング内で行われるはずの項目を別請求(鏡のウロコ除去)
●どこの部分が書かれていない請求(ペットの蓄積汚れ)
このように確認書を理解しておくことで、相手の請求に対しておかしな部分に気づきます。
②修繕費用(クロス、クッションフロア張替え)
クロス、クッションフロアには対応年数(経年劣化)という考え方が適用されます。
(クロス、クッションフロアの対応年数は6年間。)
例えば)5年間住んで部屋を退去します。
大家さんからクロスの貼替費用6万円(新品価格)請求されたとします。
この場合、クロスの価値は残り1年分しかないので1万円だけ払えばいいです。
※仮に契約書に「減価償却は考慮しないものとする」と書いてあったとしても、過去の裁判事例では減価償却が認められた判決はあります。
今回の退去明細を見ると経年劣化を考えて「計算している項目」と「計算していない項目」がありました。
また、クッションフロアや網戸の貼替費用が確認書に記載している金額と補修費用の請求金額に違いありました。
補修費用(請求金額) | 確認書の金額 (経年劣化を踏まえた) | |
クロス | 9,860円 | 2,740円 |
クッションフロア | 52,542円 | 49,538円 |
網戸 | 19,700円 | 17,100円 |
合計 | 82,102円 | 69,378円 |
1つ1つは小さな金額ですが、合計すると約12,000円くらい多く請求されています。
③破損・欠損費用
破損、欠損は入居者の落ち度になる部分なので請求された金額は全て払わないといけません。
ただ、1点破損した内容について確認書に記載がないものがありました。
※エコカラットとは部屋の湿度調節をしてくれる凄い壁です。
Sさんが借りたお部屋にエコカラットがついており、こちらも一部破損していました。
(Sさんも一部破損した認識あり)
ただ、確認書にはエコカラットの補修金額の記載がありません。
※クリックしたら拡大できます。
なので、エコカラット補修工事39,763円が整合性が妥当なのかどうかも解りません。
そこで、エコカラットの補修費用の詳しい内訳を不動産会社Xにお願いしました。
こんな感じの回答を期待してました。
ただ、Xからは期待していた回答が頂けなかったのでエコカラット費用は払えない
旨を伝えることにしました。
最終的に
項目 | 費用 |
清掃費用 | 26,360円 |
クロス補修費 | 7,120円 |
CF費用 | 3,004円 |
網戸費用 | 2,600円 |
エコカラット費用 | 39,763円 |
小計 | 78,847円 |
税込み金額 | 86,731円 |
各それぞれの計算と返金すべき理由をまとめて86,731円の返金をXに求めました。
大手不動産会社Xの反応
実はここからが時間がかかりました。
基本的にXとのやり取りはSさんがメールで行っています。
こちら側の要望をまとめた書類をメールで送信して
1週間…
2週間……
Xの担当から連絡、折り返し一切なし。
完全に無視されていると思っていると!
と思っていた時にこんなXから返信を頂きました。
S様
お世話になっております。
ご連絡遅くなり大変申し訳ありません。
退室精算の件、下記回答させて頂きます。
①現状回復工事費用の相違について 現状回復工事の工事単価について2019/4に添付内容の工事金額に変更されておりました。 しかしS様の更新契約が2019/3に書面を頂いておりました。
また2021/5より新たな更新契約の予定でしたが 転居予定があった為、更新手続きは頂いておりませんでした。
最終居住契約期間が上記変更後の期間でしたので精算単価が改定後の金額となっており、S様お手元の確認書金額とは相違が発生しておりました。
大変失礼致しました。こちらはS様と確認書を結んでいる工事単価にて精算させて頂きます。
②エコカラットのリペア工事について 確認書に記載のない単価という点は承知致しました。
しかしエコカラットへの傷、破損はS様の過失と見受けられます。
当社と致しましては、一部のご負担でも頂ければと思いますがいかがでしょうか?
エコカラットについては耐用年数設定がない為、金額についてご相談出来れば幸いです。
基本的に書面頂いた内容のご返金をさせて頂きたく考えております。
上記①については確認書金額相違の内容ご報告
②に関してはご相談となります。
何卒、宜しくお願い致します。
担当:●●
この時点でこちら側がの主張がほぼ通ったことになります。
最終的にSさんがXとの話し合い。
エコカラット請求金額の1/3を払うことで合意となりました。
74,572円返金されることになりました。
敷金返金請求の最悪のケースとまとめ
まずは、賃貸契約をした時に署名・捺印をした書類をすべて確認をしてください。
当初Sさんからは賃貸借契約書しか署名捺印していないと言われてました。
ただ、内容を確認する中で「原状回復費用に関する確認書」が見つかり返金してもらう金額大きく変わりました。
もし、XとSさんの間で「原状回復費用に関する確認書」がなければ20万円以上の返金請求はできていました。
それくらい、1枚の書類で返金してもらえる額が変わるということです。
また、今回の敷金返金関して一部内容を弁護士さんに相談させて頂きました。
その中で敷金返金の最悪のケースについて教えて頂いたのでシェア致します。
敷金返金の最悪のケースは「話し合いに応じてくれない」こと!
悪い貸主(大家さん)は訴訟(少額)されて判決がでるまで動かないケースがあるそうです。
不動産会社Xの請求でおかしな部分がありましたが、非常に良心的だったと感じています。
返答まで時間がかかりましたがきっちり対応してくださいました。
最後に大家業を営んでいる私から皆様にお伝えさせて頂きます。
多くの方が賃貸人(貸してる)の方が立場が強いと思っていると思います。
それは大きな間違いです。
法律や裁判事例、ガイドラインを考えてみると賃借人(借りてる人)の方が圧倒的に保護されています。
ようするに知識があれば戦えます。
この情報が少しでもあなたのお役に立てば嬉しいです。
最後までご覧頂きありがとうございました。