2020年4月賃貸借契約に関する法律が一部改正になります。前回もこちらのブログで大家さん向けに「2020年4月1日賃貸借契約の法律改正!契約書の書き方について!」というブログを書かせて頂きました。そちらの方も合わせてご覧ください。
今回もそちらの続編ということで隼綜合法律事務所に所属されておられる加藤幸英弁護士のYoutube動画を参考に情報をまとめせて頂きました。
一部使用不能(滅失)と家賃減額について
減額請求についての概要
借りているお部屋の一部が水漏れ、火災などで一時的に使えない時の法律が変わります。これが変わる事によって契約書の書き方も変わりますのでしっかり覚えておいてください。
まず、こちらについて改正前と改正後を載せておきます。
<改正前>
賃借物の一部が賃借人の過失によらないで滅失したときは、賃借人は、その滅失した部分の割合に応じて、賃料の減額を請求することができる。
<改正後>
賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。
要約すると、今までは建物の不具合によって使えない場合「入居者が大家さんに家賃を下げてよと言って」減額される形だったのが、改正後は大家さんは当然のように家賃を減額されてしまうんです。
ただ、これには条件があり大家、入居者どちらかに落ち度がある場合とそうでない場合で減額請求が変わってきます。
大家に落ち度 | どちらにも責任なし | 入居者様に落ち度 |
減額される | 法律による定めなし | 減額されない |
この時に問題になってくるのが「どちらにも責任が無い時」(地震など)は事前に契約書に記載しておく必要があります。
加藤先生はこのように書くことを推奨されています。
「大家・入居者のいずれの責めに帰することの出来ない自由(設備の故障、本件建物、設備の保守・修繕を含む)によって居室の一部使用できなくなった場合でも、賃料の減額しないものとする。
家賃の減額請求の計算方法
改正後は「設備が壊れて使えなくなったとき」も家賃の減額請求されることになります。
じゃあ、その時にいくら減額するのが妥当なのか?これをハッキリさせてとかないと大きなトラブルに発展ます。
そこで、契約する前にある程度の目安をハッキリさせる必要があります。
ひとつの参考にはなりますが
状況 | 賃料の減額割合(月額) | 免責日数 |
トイレが使えない | 30% | 1日 |
風呂が使えない | 10% | 3日 |
水が出ない | 30% | 2日 |
エアコンが作動しない | 5,000円 | 3日 |
電気が使えない 30% | 30% | 2日 |
テレビ等インターネット 設備が使えない | 10% | 3日 |
ガスが使えない | 10% | 3日 |
雨漏りによる利用制限 | 5~50% | 7日 |
<出典:(公財)日本賃貸住宅管理協会>
減額割合とは家賃10万円のお部屋のトレイが1ケ月使えなかった場合30%減額しますよというものになります。この場合は7万円になるということになります。
免責とはトイレを修理に1日、お風呂の修理に3日といった猶予期間になります。
例えば)家賃6万円のお部屋で3日間トイレが使用できなかった場合。
3日-1日(免責期間)=2日間
6万円÷30日=2,000円/1日
2,000円÷30%(減額割合)×2日間=1,200円の減額
減額請求についてのまとめ!
・大家として修繕義務を負っていることを忘れない
・住むに耐えれないほど部屋の機能が低下している間は家賃が減額されることを承知しておく
・入居者から故障の連絡受けたら速やかに現場確認又は業者に依頼
・修繕完了に向けたスケジュールの見通しを入居者にわかりやすく説明しておく
入居者による修繕権について
修繕権についての概要
賃貸の場合、建物は大家さん(貸主)の持ち物になりますので、入居者様(借主)は大家さんの許可なく修理をすることが出来ませんでした。ただ、それが原因で大家さんに修繕を依頼したのに対応してくれない。借主の方で修繕することが出来ない。このようなケースが問題になってきました。
まず、こちらについて改正前と改正後を載せておきます。
<改正前>
貸主は、賃貸建物に借主の生活に支障のある不具合が生じた場合、借主が通常の生活(使用・収益)ができるように必要な修繕を行う義務がある。
<改正後>
①借主が貸主に修繕が必要であることを通知し、または貸主がその旨を知ったにもかかわらず、相当の期間内に必要な修繕をしないとき
②急迫の事情があるとき
この改正によって入居者側が修繕してもOKになりました。
敷金についての取り扱い
これまで賃貸借契約における敷金については明確になっていませんでした。しかし、今回の法改正で敷金について明文化されました。
「借主が部屋を適法に引き渡したとき、貸主(大家)は敷金を返還しなければならない。」
これは部屋を明け渡したらすぐに敷金を返還しないといけないという意味になります。
なので大家さんとしては
「敷金返還については、入居者に対し、入居者退去後かつ金額の合意後60日以内に返還する。」
このように書いておいた方がいいでしょう。
遅延損害金について
家賃滞納に対する遅延損害金についても変わります。具体的には「5%」だった利率が変変動制となり当面は「3%」になります。今までは契約書に書いていなくても5%だった金利が3%になるわけです。
なので最初から契約書にこのように書いておいてください。
賃貸の滞納に対する遅延損害金は「年14.6%」とする。
このようにしておくことで早く退去してくれた遅延損害金は免除するという交渉材料にも使えます。